第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】
1 題名
しょうらいのゆめ
2 作者 つつい つつさん
3 投稿 19/02/10
4 書出 『頭からふとんを被り、縮こまっていた。』
その日を切り抜けることしか考えられない状況に追い込まれた主人公の思考が装飾なく描かれていると感じました。また、パンパンに膨れてしまった閉じられた世界に、針を刺すように不意に訪れる展開に読者としては望みを託すような気分になりました。
◎あらすじをざっくりと
本作は、家庭内で虐待を受ける中学生の主人公が、ベランダに引っかかっていた風船に結び付けられた『(しょうらいのゆめ りょうしさんになりたい りょうた)』というメッセージを見て、苦境から脱出しようと試みるお話です。
◎感想をひとことふたこと
主人公の思考が中学生のそれよりも幼いように感じられました。昨今の報道で聞かれる虐待事件等でも、被害者にも「自己防衛しなくては!」という思考が働く実態が伝えられていますので、もしかしたら主人公はそれすらも考えられないところに追い詰められているのかもしれません。
そう考えると、主人公はいつからこういった状況になっているのかが、重要な要素に感じられます。学校にはいつから行っていないのか。食事が不十分なことでどういった弊害が出ているか。そもそも、どうしてこんな状況になってしまったのか。
もちろん、これらを設定資料よろしく懇切丁寧に箇条書きしては小説にならないので、登場人物の言動から読者が察する程度の描写がほしいところです。