時空モノガタリ-感想録

2000字小説投稿コンテストサイトの「時空モノガタリ」でコメントした内容を記録しています。

いまのひとこと 読まねば

第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】

1 題名 

じいちゃん、はじける

2 作者 田辺 ふみさん
3 投稿 19/02/16
4 書出 『「なんだ、これ?」』

 

祖父に付き合う主人公と、若々しい祖父が興味深い作品でした。

 

◎あらすじ

 祖母の死後、独居を続ける祖父を慮った主人公がある日家を訪ねて、祖父が社交ダンスを始めたことを知る。祖父の活躍を見るために大会会場に足を運ぶ主人公だが、4人の女性と続けざまにパートナーを組まなければいけないことに不安を抱える祖父に、主人公は「祖母は約束を守る祖父が好きだった」と告げて大会に送り出すのだった。

 

◎感想

『じいちゃん』の口調に一部違和感を覚える箇所がありました。(『「そんな、選ぶなんてできないよ。時間がかぶった相手には先着順ということで断ったけど」』など)

 

『じいちゃん』は何歳くらいなんでしょう?

……まーた、歳の話してるよ、と自分でも思うんですけど、キャラクターのイメージがなかなかわかないんですもの。わたしの貧弱な想像力を補うと思って、情報をもう少し濃い目で……お願いします。

 

 また、社交ダンスを始めた経緯も少し掘り下げてほしかったです。

 

『モテるぞ』と祖父様はおっしゃっているのですが、それが背景ならセリフで継ぎ足せないでしょうか。個人的には下のようなやりとりです。

「じいちゃん、モテたかったの?」

「そりゃあ男子だからなあ」

「ばあちゃんに怒られるよ」

 じいちゃんが困ったように笑う。あいつが言ってたのさ、と続ける。

「『あなたってモテそうにないから、時々自分の選択が不安になるわ』ってな。だからほれ。あいつは見る目があったわけだ」

 チョコレートを自慢げに掲げてみせると、食べろ食べろ、と照れ隠しのように僕に促した。

 

 一方で、社交ダンスそのものに憧れがあったり、祖母様との思い出があったりというのも良いですよね。あるいは、本作でも触れられているように、リーダーの少ない社交ダンス界を助けるつもりで話に乗った、という展開も面白いかもしれません。どちらにしても、ここが描かれているとラストがさらに際立ったのではないかと感じました。

 

 

 ちなみに超・蛇足ですが、『今日は連続四回も踊らないといけないんだ』という祖父様の言葉に『俺も少しは調べてみたから、わかっている。ワルツ、タンゴ、チャチャ、それから、何だっけ?』とあるのですが……確かに、主人公が社交ダンスに興味がない、とわかる文章ではあるんですけど、せめて『調べた』とあるのですから、スタンダードか、ラテンアメリカンか、くらいは……知っていてほしかったというか……そもそも『チャチャ』って……

 

背すじをピン!と鹿高競技ダンス部へようこそ〜』(横田卓馬集英社,2015.)とか『ボールルームへようこそ』(竹内友講談社,2011.)など漫画も充実してきているジャンルですので、ダンス小説の波を、ぜひ。