第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】
1 題名
11光年でのプレゼント
2 作者 W・アーム・スープレックスさん
3 投稿 19/03/03
4 書出 『ミサ隊員の顔が、妙にこわばっているのが気になった。』
地球から11光年先離れようと好意の伝え方は変わらないのだと思うとどこか壮大にも、一方で身近にも感じられる筋立てでした。未知の惑星で二人がどんな研究生活を送るのか空想したくなる作品でした。
未知の惑星に向かう宇宙船。隊長である主人公は、あるメンバーの緊張感漂う様子を心配して声をかけようと船内を探し回る。メンバーと合流し、バレンタインデーのチョコレートを渡される。
W・アーム・スープレックスさんじゃないかなあ、と思っていましたよ(自慢げ
……まあ、読みはじめにどんなに頑張ってもチラッと作者名が見えちゃうんですけどね。作者様を意識して読むと、変なバイアスがかかっちゃう気がしまして。できるだけ見ないようにしているわたしです。
W・アーム・スープレックスさんの作品の傾向のひとつとして、オチの意外性を際立たせるために冒頭~中盤は別視点で詳細に書く、というのが定石になっているようです。おそらく作者様もこの書き方がお好きなのか、多くの作品で活用されています。
一方で、詳細に書かれる内容が冗長にも感じられます。
特に本作では、「おや、ミサが緊張してるぞ? 11光年先の未知の惑星に近づいたからかな。見て見て! ミサがすっごい緊張してる。でもみんなはリラックスしてる。彼女はナイーブだから気をつけないと。未知の惑星は綺麗だなあ! あれ、ミサがいないぞ。ミサー! ミサー! あ、ミサだ。どうしたんだい? ああ、バレンタインデーなのかい」という具合に、主人公はミサの緊張の糸口すら見つけられていないんですよね。
読者としては、主人公に「明確な誤解」(日本語が変……)を持って行動してほしいんですよ。ミサが生物学者だっていうなら、旅の途上で新たなミッションが加わって失敗できなくなった、とか。実験植物を枯らしちゃった、とか。そういうことで悩んでいるに「違いない」と思い込んで動いてほしいんですよね。ただ単に「緊張をほぐしてやりたい!」なんていうほんわかした理由で宇宙船内でラブい鬼ごっこされても……
……あと、漢字の使い方や表現で気になることも山積みなんですが、不毛な結果になりそうなので、あえて一点だけ申し上げると、『ましてリサのようなナイーブな神経の持ち主はなおさらだろう』での『リサ』って誰ですか、ということです。投稿前の再チェックをおすすめします。