時空モノガタリ-感想録

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いまのひとこと 読まねば

第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】

1 題名 

遠くへ、飛べ

2 作者 小峰綾子さん
3 投稿 18/12/25
4 書出 『「翔馬!飛べ!」』

 

部活動を通じた中学生らしい成長の描写が魅力的でした。

 

 

中学校の部活動では選手として思ったような活躍ができない主人公。マネージャー業に専心しようとするものの、走幅跳選手として活躍する同級生を前に複雑な気持ちを抱く。迎えた本番――同級生が助走位置につく。駆け出す。踏み切り板を踏む。気づけば叫んでいた。『飛べ!』と。

 

というようなお話です。

 

非常に王道というか、スポーツ作品のど真ん中をいきます。ただ本作の注目点は、主人公が挫折感をそれほど表に出していないことです。記録が出ないことについても『陸上を始めたときに上に行けるぐらいのやつなんて一握りだ』と達観している。(諦観?)

 

むしろマネージャーになって「自分が選手を支えてやってるんだぜ」という自負のようなものを抱いてもいる。そういう気質の主人公なのですが、そこはやはり中学生なのか、プロフェッショナルたろうとする姿勢はあまり描かれていません。(結局、『それだけではなく、家族、友人、それに俺たちサポートメンバーの支え、があってこそという実感』を選手達が持ったらしい、ということだけで具体的な描写はない)

 

エース選手が怪我や病気でマネージャーになる、というのとは違い、自分の限界を理解してサポート役に徹する、というのはそれなりの矜持があるとは思うので、そこを読みたかったなあ、という気持ちです。