第163回 時空モノガタリ文学賞 【 504号室 】
1 題名
504号室が消えた
2 作者 若早称平さん
3 投稿 18/12/12
4 書出 『そのマンションに決めたのは彼の方でした。』
『まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした』という王道のプロローグから展開された不気味なお話でした。
必死になる『彼』と、言動の真意を掴みかねている語り部の対比が活かされた構成だと感じました。
ちなみに、『彼女に取り憑き、背後から俺を睨みつける青ざめた女』とありますが、作中の『彼女』は取り憑かれたことによって何か影響が出ていたのでしょうか。
単純に曰く付き物件を告知されていなかった、という話かと思いきや、『翌日から彼は仕事もそっちのけで郷土史やら地理やらを調べ始めました』ともあるので、もう少しスケールの大きな背景がありそうですが、『青ざめた女』だけではどうにもわかりません。
(気になった点の覚え書き・メモ)
◎『きっかけの手紙』
→本当に話のきっかけだけなのか? それ以降には関係していない? 内容には踏み込んでいない。ただのアイテム?
◎『彼が書き換えられたプレートを手に「やっぱり」と呟いている』
→事情を隠したい管理会社が、一見で「書き換えられた」とわかってしまうようなプレートを設置するか? そもそも書き換えるか? 設置し直すのでは? 間違い郵便ですぐに察した背景は?
◎『彼はなにかに取り憑かれた、じゃなくて、捕われたんだと思います』
→自身が『取り憑かれ』ているから、彼のことを『捕われた』と表現している? 『捕われる』の主語もよくわからない。
◎『今日先生のところに伺ったのはなんとか彼を説得して欲しいからです』
→自身の意図なのか、憑きものの結果なのかが不明瞭。
◎『有名な心霊研究家』
→唐突な登場。読後に読者が空想できるだけの情報がほぼない。