第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】
1 題名
シャボン玉 ♪♪
2 作者 風宮 雅俊さん
3 投稿 19/01/21
4 書出 『ストローをシャボン液が垂れないように慎重に口に運ぶと、ゆっくり大きく息を吹き込んだ。』
『凍り付』き、『動けないでい』ながらも、『満面の笑みを浮かべ』られる娘の芯の強さが感じられる作品でした。
シャボン玉に興じる娘とママ。宇宙の成り立ち。そしてシャボン玉を指で突き刺すママ。手をつないでアパートに戻る娘とママ、というお話でした。
複雑に見えるものも、個人の感情で容易に弾ける(破壊されてしまう)ような危うさを孕んでいる、という話なんでしょうか? ちょっと理解が追いつかなかったです。
個人的に興味深かったのが、『娘』と『ママ』の表記です。
初めは、親子かな、とも思っていたのですが、あえての『ママ』表記ですし、『娘』の年の頃も推測できる描写がないので、実はスナックとかクラブの『ママ』と従業員の『娘』だったら……と想像したら少し恐い話に思えてきました。
少し頭足らずにも感じられる無邪気な『娘』がシャボン液を膨らませている。それを『ママ』が見つめている。唐突な宇宙の話が『ママ』の回想で、自分の城であるクラブを築くまでを思い起こしている。仲間や客もたくさんいた幸せな時間。その回想を強制終了させるように、『ママ』はシャボン玉を突き刺す……この、突き刺す、もまた何を意味しているのか……『娘』が凍りつくほどの迫力を持った瞳で。己の城が崩れた(奪われた?)恨みか、あるいは、何かを突き刺したことの暗示か。それでも、『娘』はそれを飲み込んで、『ママ』の手を取る。
二人はお互いが宇宙に一人しかいない存在として手を携えていく……
……そんなことがあるわけ、ない。