第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】
1 題名
日常百合は虚構なのか
2 作者 戸松有葉さん
3 投稿 19/01/20
4 書出 『「チョコメロンパンって、絶対おかしいと思うわけよ。元々メロン要素少なかったメロンパンなのに、チョコ味で実物のチョコも入っていて、色もチョコレートだったら、これはもうメロンパンじゃない」』
これまで疎遠だった顔見知りの同級生。
そんな彼女との『話したいことはいっぱいある』状況に対して頭の整理がついていない『由加』さん。
その混乱ぶりが随所に描かれた作品だと感じました。
読者に頼りすぎていないでしょうか?
個人的には、作者様が書くことを怠った文章を、読者の読解力や想像力に委ねるのは無責任であると思います。これは「わかる奴だけ読めば良い」以前の問題です。
本作は、幼い頃からの顔見知りではあったがそれほど親しくない同級生とどうやって距離を縮めるか、という――ド王道でありながら、実に創作幅の広い題材です。
この題材を楽しむために、例えば共通の話題を模索するアタフタ感や、偶然を装ってお近づきになろうとする用意周到さ、あるいは何らかの事件や事故に巻き込まれてしまうという運命めいたもの……などなど、先人達は様々な魅力ある演出・構成を世に送り出しています。
ところが、本作にはこういった工夫がほとんど見当たりません。
練り込みを感じないセリフの数々や、登場人物達に愛着を抱けるほどの背景や設定もない構成。全てが読者に丸投げされ、既存作品におんぶに抱っこと思われてなりません。とても残念です。