時空モノガタリ-感想録

2000字小説投稿コンテストサイトの「時空モノガタリ」でコメントした内容を記録しています。

いまのひとこと 読まねば

第163回 時空モノガタリ文学賞 【 504号室 】

1 題名 奇跡の部屋
2 作者 W・アーム・スープレックスさん
3 投稿 18/12/03
4 書出 『その攻撃が政府軍のものかそれともテロ集団かは定かではなかった。』

 

焼け焦げた壁面、熱に溶かされた鉄骨、瓦礫の山々……

そんな中に取り残されたように佇む『504号室』の姿が映像として浮かび、非常に印象的でした。

鳥の巣箱のような、どこか穏やかなイメージすらあり、戦乱の理不尽さとのギャップが際立っていました。

 

何となくですが……『504号室』には残された理由(政府の機密文書とか、テロに使う大量破壊兵器とか)のようなものが結局はあって、姉と弟はそれを駆使して平和を手に入れるのかしら、と勝手に想像していたので、衝撃の結末でした。

 

(メモ)

戦地で無傷の部屋に入る。水と食料があったものの、姉弟で取り合う内に、姉が死んでしまい、弟も閉じ込められる。部屋の周りでは無傷の奇跡にあやかろうと人々が祈っている。誰にも弟の声は聞こえない。

 

◇気になった表現箇条書き

・『その攻撃が政府軍のものかそれともテロ集団かは定かではなかった。』
・『そのガレキの上に、部屋がひとつ、のっかっていた。』(のっかる、は方言でしょうか?)
・『号数はこの際問題ではない。』
・『さなか』、『かれら』、『まちのいたるところで爆発はおこり、毎日のように死者がでた。』、『その夜、二人の子供が、崩壊した建物のあいだとあいだを、身をかくすようにしながらつきすすんできた。姉も弟も、いつどこから銃撃されるかもしれない恐怖におびえ、目はたえまなくあたりをうかがっている。昼間、かれらの住いが砲撃され、いっしょにいた両親もろともふきとばされた。家の外にいた二人は命からがらにげだし、なおもくりかえされる爆撃に追いたてられて、親の安否を確かめることもできないままにげまわっていた。』、『わずかな風音ひとつにも全神経をとがらせながら姉と弟は、あるきつづけた。』、『姉はおもわず弟の手をちからづよく握りしめた。』、『二人はドアのそばまできてあゆみをとめた。』、『じつは彼女じしん、それをまわすまではまさか開くとは思ってもいなかった。』、『ながいあいだ空腹状態に苦しめられてきたかれらは、それこそむさぼるようにそれらの食糧をたべはじめた。旺盛なかれらの食欲のまえに、たちまちにして保存食は減っていき、三日もたたないあいだについに一個のパンが残るばかりになってしまった。これまでなら、ゆずりあうようにして食べてきた二人だったが、それも食べ物がゆたかにあるときの話で、いまとなってはあと一個になったパンをまんなかにして、互いに険しいまなざしでにらみあった。』、『室内をからみあってころがっているうち、途中グキッという鈍い音がして、自分の下で姉が首をいびつにまげてぐったりしているのを弟はみた。』(あえて漢字変換していない? 他の変換箇所との違いは? 狙った効果は? 表現方法なのか?)
・『祈りをささげる連中は、それぞれ異なる自分たちの信仰する神の名を唱えた。』
・『そのなかにはいたいけない子供も少なくなかった。』(いたいけない、の用法が勉強になりました。いたいけな、だと思っていました)
・『日中は少なくない人々が祈りをあげにくるので、ともすればこの辺りが安全地帯と思われがちだが、やってくる人はいつ命を落とすかわからない危険を覚悟していることを忘れてはならない。』