時空モノガタリ-感想録

2000字小説投稿コンテストサイトの「時空モノガタリ」でコメントした内容を記録しています。

いまのひとこと 読まねば

第163回 時空モノガタリ文学賞 【 504号室 】

1 題名 

内面を愛するマンション

2 作者 黒猫千鶴さん
3 投稿 18/12/15
4 書出 『初めて彼氏が出来た。』

 

見目麗しい妹との比較に、鬱屈した想いを抱える主人公――幸せの一歩を踏み出したはずが、そうもいかない。
その上、やはり妹の後塵を拝してすらいる。エレベータ内でのイチャつきの描写や、『僕達の部屋』から『君の部屋』への言い換え方が巧みだと感じました。
それにしても『彼』はマンション1棟丸々の所有者なのでしょうか。
仮に1室1人のペースだとすると、504号室以降も続くのでしょうね。
恐いですね。

 

ホラーにもミステリーにも振り切れていない中途半端さを感じます。

猟奇的に人が死んでさえいればモノガタリが盛り上がる、というわけではないと思うのですが……作者様との考え方の違いを強く感じました。

 

そもそも構成も『彼氏が出来た』と冒頭で言いながら、突然、妹の話になるわけで。

あら、彼氏の話はないのかしら、と思っていたら、作話上必要なのかどうかよくわからない、胸当ててんのよ、と、エレベータ内の乳繰り合いはきちんと描かれています。

作者様のご趣味でしょうか。

 

とはいえ、全体的に『内面』云々が強調されるので、てっきり「『周りの人は私の外面しか見ない!』なんて言っていたけど、他人を外面で判断していたのは、実は私のほうだったんだ……(反省)」みたいな締め括り(これは絶望的につまらない…)になるのかと思ったら、そうでなかったところはホッとしました。

 

死の描写が淡白で、結末がよく理解できず、結果として504号室が登場しなかった点等は悲しいところです。

 

(ふと気になるメモ)

『彼女は私とは比べものにならないくらい可愛く、清楚で可憐だった』

 →可愛い、と、可憐、が並ぶとやや過剰表現に感じられる。

『彼だけは、私の内面を見てくれる』

 →唐突に感じる。「妹ほど可愛いわけではない私と付き合っているのだから、きっと外面ではなく内面を評価してくれているんだろう。その内面が何かはわからないけれど」ということ?

『一五階建ての新築マンションを購入したらしく、愛した人と一緒に暮らすのが夢なんだとか』

 →新築マンションを購入、と聞いて、まさか棟ごととは思わず…先入観を持っていたと自戒せずにはいられません。

『その自慢話すら鬱陶しくて、聞かなくなってから何日経っただろう? 両親と連絡を取らなくなって、何年か経過した』

 →?

『妹は真っ赤なペンキをブチまけた床の上に寝転び、胸には包丁が突き立てられている』

 →いつ部屋に入ったのか。

『耳元で囁かれ、背筋が凍る感覚に襲われた。同時に、激痛が胸に走る。ジワジワと広がる鈍痛が、全身から力を抜いていく』

 →……

『妹と同じように腹を裂かれ、痛みがが徐々に感じなくなっていく』

 →……