第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】
1 題名
五点着地
2 作者 R・ヒラサワさん
3 投稿 18/12/24
4 書出 『「先輩、それをマスターすれば本当に大丈夫なんですか?」』
己の進退に悩む主人公が、わかりやすい解決策を望む姿に共感できました。
「まずは戦隊ヒーローとして体を張ったアクションに磨きをかけてみては?」という先輩のアドバイスも、現状を打破できるほどのものには思えない。むしろ懐古趣味、自分語り、不摂生、非正規労働という先輩の姿が、己の歩む未来に重なって見えさえする。
苦しいところです。
『五点着地』という言葉に、戦隊ヒーローもまた複数人数を配することで、大ヒットや大爆死をコントロールしているのかもしれないと感じました。
とはいえ思ったとおりの効果を得るには相当な技術が必要なのでしょうね……
『グラップラー刃牙』(漫画,板垣恵介,秋田書店.)かな? と思ったら本当に五点接地転回法の話でした。
『要点が分散され、何のインパクトも相手に与えない』と主人公に言わせているんですが、正直なところ、別に要点は分散されていないと感じました。単純に話が散らかっているだけで、これは登場人物である『先輩』の巧みな話し方によるものではなく、作者様のなかでストーリー作りが十分になされていないことの結果ではないかと思います。
推敲をおすすめしたいです。
ただ、こういった「ある種の相談に各論で答えていたら話の着地点を見失った」という話作りは読者にも少なからずフラストレーションを抱かせるため、読後の満足感を得させるような構成は非常に高度な技術が必要だと感じます。
少なくとも『トモヒロは最寄りのハローワークを目指した』では不十分でしょう。