第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】
1 題名
サイダーガール(ズ)
2 作者 北 流亡さん
3 投稿 19/02/18
4 書出 『トラックが、朱に染まり始めていた。』
部活終わりの心許ない空気感が季節の描写と相まって巧みに表現されていると感じました。『「陸上に命を賭ける」』という学生らしいノリと勢いの願掛けまでもが、この瞬間には重大事に思えてしまう。そんな描き方が個人的に好みでした。
◎あらすじ
本作は、高校最後の部活の日を迎えて空虚な気持ちを抱く主人公が、同級生との帰り道に、在学中は断っていたサイダーを口移しで飲ませられるというお話です。
◎感想
高校生女子同士がキスをするだけでドラマティックになる時代は終わったんだなあ、と感じる今日この頃です。
作品全体の雰囲気は好きなんですが、どうも内容に入り込めない……文章のせいなのか、描写のせいなのか……掴みきれていないところがあるのが歯がゆいです。
ちなみに冒頭で主人公が眺めるトラックがかなり本格的なので、「高校の部活でこんな競技スペースを毎日使える環境じゃあ……インハイ行くしかないですなあ」と感じたものです。
まとまっていないですが、気になった日本語だけでも箇条書きします。
▼『朱に染まったトラックが、陰射し始めていた』
→『陰射し』が、いんしゃ、であればそんな単語は初耳ですし、かげさし、であれば、やはりそういう表現も初耳です。
▼『郵便局のあるT字路を右に曲がる』
→丁字路、でしょうかねえ
▼『渚は喜色満面の笑みで、』
→喜色満面、て既に笑顔じゃないでしょうか? 重複表現?
▼『陸上を失った自分はどうなってしまうのだろう』、『「遥香は大学行っても陸上続ける?」』、『考えても無かった』
→これは……どういう意味なんでしょう。次の①~③に当てはまるものがありますかね?
①「高校の部活が最後じゃなくて、大学に行っても陸上を続ける選択肢があることを考えてもいなかった」
②「もう自分にとって陸上は終わったものなのだから、続けるなんて選択肢は考えてもいなかった」
③「高校3年生の自分だけど、大学に行って何をやるかなんて考えてもいなかった」