時空モノガタリ-感想録

2000字小説投稿コンテストサイトの「時空モノガタリ」でコメントした内容を記録しています。

いまのひとこと 読まねば

第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】

1 題名 

神の指

2 作者 七原 紅音さん
3 投稿 19/01/26
4 書出 『彼女は、一度耳にした曲なら全て正確に弾くことが出来た。』

『全く上達しなかった』、『下手なままだった』、『泣いてばかりいた』と散々な主人公ですが、練習が嫌になって投げ出した、というわけでもなく、そう言い切れるほどに努力し続けた心の強さに感心しました。

 

ああ……

 やはり来てしまいましたね……

  あの募集画像でも……

   『はじける』ではなく『ひける』作品が……

次は『たまける』でしょうか……? それとも『ダンける』?

 

(ざっくりあらすじ)

世界的な名ピアニストである主人公。その技巧は、努力でも才能でもなく、実は「一生のお願い(×2回)」を使って手に入れたものだった。第一の願いは『全ての楽器が完璧に弾きこなせるようになりたい』、第二の願いは『自分が奏でる音色に誰しもが魅了されるように』――

ところが地位も名声も手に入れた彼女を襲った交通事故。半身不随の重症ながら、疲れ切った彼女は、最後の願いで『ずっと眠り続けて、その夢の中で自由に音楽が楽しめますように』と願い植物状態になる。

 

(感想などをひとことふたこと)

才能でもなく、とか自分で書きましたけど、まあ、才能ですよね。

主人公の家系は『生まれてから一生の間に三つだけ、なんでも願いを叶えることが出来る』という血筋なのだそうです。すごいですよね。無条件ですよ。

しかも願い事の数え方があまり厳密じゃないですよ。(『全ての楽器』とか)

大盤振る舞いです。

 

ですが、この願い事の数え方で、ふと疑問がわいたことも事実です。

例えば最後の願い事『ずっと眠り続けて、その夢の中で自由に音楽が楽しめますように』ですが、これって願い事2つ分なのではないかと思うんですよ。要するに「①ずっと眠り続けられますように」と「②自由に音楽を楽しむ夢を見られますように」という願い事を合算しているのではないか、と。

 

そう考えるとですね、主人公の最後の願い事は順番的に「ずっと眠り続けられますように」だけになってしまう! つまり、主人公は希望していた夢を見ていない可能性もあるわけで(もちろん見ている可能性もある)、このラストはなかなかスリリングなんじゃないかと思うんですよ。(野暮なことを言うと、ずっと眠り続ける、ということは不死なんですよね……)