時空モノガタリ-感想録

2000字小説投稿コンテストサイトの「時空モノガタリ」でコメントした内容を記録しています。

いまのひとこと 読まねば

第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】

1 題名 

爆発ピアノ

2 作者 腹時計さん
3 投稿 19/02/13
4 書出 『結婚なんて、死んでもしたくないなあと、ココロの中で思っている。』

 

日々、両親の不和を目の当たりにして結婚生活の意義を見失う、という悲しい状況が主人公の視線を通して熱を持って描かれていたと思います。特に、父母のいずれかに肩入れすることなく、どちらも拒絶した最後はコンテストテーマにもあっていると感じました。

 

◎あらすじ

 本作は、両親の不仲に苦悩する主人公の我慢が限界に達したところで、父母に『なんでその子どもの前でケンカするの?』、『なんであたしなんか産んだの?』と言葉を叩きつけて家を飛び出すお話です。

 

◎感想

 都都逸に『けんかしたときこの子をごらん 仲のよいとき出来た子だ』というほんわかした作品があるんですが、本作はそういった甘さが通用しないようで、何とも辛い家庭状況です。

 

 とはいえ、確かに何でこんなに喧嘩してるんでしょうね? 本作の両親は。

 

 やり取りだけ見ると、『「何よ! もう話は終わったでしょ!」』、『「終わってない! 逃げるな! だいたい、お前がいつも準備が遅いから――」』、『「あなただって、いつも前もって言わないじゃない、人のこと言えないじゃない――」』なんですけど……これは母親が何かをしていないことに父親が腹を立てているという構図なんでしょうか。

 

 夕飯の準備、とかだったら父親の心の狭さを軽蔑する程度ですけど、作中の要素的に「ピアノの発表会の申し込み」だったら、ちょっと……どうかなあ、と思いますね。

 

例えば、次の①から③の流れならどうでしょう?

 

① 母親が娘のピアノの発表会の申し込みに手間取って、受付期限が過ぎてしまった。それを父親に相談するものの、父親は激昂。「準備が遅い!」と母親をなじる。

 

② ところが、実は最初にピアノ教室から発表会の申込書を受け取っていたのは父親。カバンにしまいっぱなしにしていたのを期限間近になって見つけて母親に渡していた。「期限間近だよって一言添えてくれればよかったのに!」と母親は主張する。

 

③ でも実際は、『すぐに弾け飛んじゃう』主人公の性格に悩んだピアノ教室の先生から「お宅の娘さん練習に熱が入ると打鍵が強くなって……すぐカッとするんです。このままだとウチはやめていただかないと……」と相談されて、父親は動揺。実は発表会どころではなかった。

 

……こうなると、両親は娘のことで喧嘩しているわけですよね。それなのに『あたし、こんなとこに生まれてきたくなかった!』って言われちゃってね……つらいですよね。でも、子どもを理由に喧嘩を正当化したら、大人としてはおしまいなわけで。とにかく、暴力はいけませんよ。言葉でも、腕力でも。

 

そんなことを考えさせられる作品でした。