第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】
1 題名
エナジードリンク「弾ける」
2 作者 小高まあなさん
3 投稿 19/02/18
4 書出 『テンションをあげることが苦手だ。』
面白かったです。
楽しかったことを認めながらも、寿命を縮めるかのような動悸と疲労感に包まれる主人公の姿に圧倒されるほどのリアリティを感じました。オモテに出にくいだけで内奥では感情が渦を巻いている……他力本願なのかもしれませんが、そんな主人公の渦をすくい上げてくれる誰かを、わたしも願わずにはいられませんでした。
◎あらすじ
感情表現に苦手意識を持つ主人公。周囲の空気をシラけさせてしまう自分を変えようと思った矢先に、『感情を解放』するというエナジードリンクを見つけ、早速試してみることに。いつも以上に感情が高揚する体験をし、楽しかったと感じながらも、否応にも増す疲労感に『「私の中にある情熱を、見つけ出してくれる人がどこかにいればいいのにな」』と涙しながら眠りにつくのだった。
◎感想
面白かったです。
コンテストテーマそのままの商品名は一周回ってありだと思えました。
この作品の特に好みな点は、周囲に同調する気持ち良さを否定しないところです。ついつい、「無理してるなー」とか「こんなの本当のわたしじゃないなー」という客観視風の転換から、「空気を読んでちゃ幸せになれないぜ! わたしはわたしの道を行く!」という話に終始しがちなところで、きちんと体験したことの良さを飲み込むというのは大切なことだと感じられました。
その上で、主人公を誰かに見つけ出してほしい、と思う一方で、主人公にも誰かを見つけ出してほしい、と思わせられる構成でした。